どこまでも懐かしく、どこまでも新しい世界。

本作は、テンプレートに沿った作品が好まれる傾向の強いWEB小説界隈において、常にテンプレートを破壊し続ける笛吹氏の最新作である。

良質な海外ファンタジー小説を彷彿とさせる世界観を彩るのは、やはりテンプレートから逸脱した魅力的なキャラクターたちだ。

棺を担いだ永遠の少女ナージェと、棺の中に収められた醜い異形のイェン。

自らの意思で動くことの出来ないこのイェンを語り手とすることにより、笛吹氏のテンプレート破壊は一層加速している。

時に彼は、永遠の少女ナージェへの歪んだ欲望を吐露する。
率直で純粋な彼の愛情は、実に変態的で直截的だ。

艶めかしい闇を抱えた棺の中の彼は、世界の謎を簡単に紐解いてはくれない。私の触れて欲しい部分には興味も示さず、ただ永遠の少女ナージェを舐め回すように観察しているのである。

まるで、読者一人一人を焦らすかのように。

作り込まれた世界観を、三人称視点ではなく一人称視点で。
それも棺の中からの実況というカタチで紡いでいくという笛吹氏のアイデアと手法に脱帽しつつ、このもどかしさの中毒となっている私である。

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