覚悟のある物語です。読者も腹を括って読むと良い。

 復讐をテーマとしたダークファンタジーは、いくつも読んできたのですが、それらとの最大の差を一言で表すと、私にはひとこと紹介の通りになります。

 復讐というテーマを一人称で扱うと、どうしても「これだけの酷いことをされた主人公」と「これだけの酷いことをした敵」という色分けがされてしまい、自己正当化とも取れる「だから仕方ないじゃないか」という言葉が導き出されてしまう事が多いと感じるのですが、それがありませんでした。

 敵となるヴィレントは「仇役」として描かれており、また主人のチェントも人格的な問題があるように感じる点が描かれています。

 行き詰まるような描写は、その双方に存在し、息苦しさを覚える事も度々ですが、最後まで読んだ時、それらの描写があるからこそ物悲しい、叙事的な余韻のあるエンディングになっていると思います。

 痛快ではない、復讐の持つ負の面を描きつつ、負の面を描いたからこそ見えてくる美しい光景がある事を強く思わされました。

 復讐の是非を問わない物語を書くには覚悟が必要だと思います。

 覚悟のある作者の物語を、たまには走りきる勢いを持つ気持ちで読む…最高の気分です。

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