悲しき回顧録

良かった点
①看板に偽りなし
 虐待を受けた主人公が、力を得ると惨劇になる。罪の告白と謳っているので、どのような内容と期待していました。きちんと切るべき人物は切っていて、好感が持てます。物語に深みが出る入場・退場のしかたなので、上手だなぁと感じました。

②努力の上で
 昨今、何の努力もず、神から与えられた力をさも自分のものと勘違いして、横暴にふるまう主人公を多く見てきました。
 そのなかでも御作は、素質はあれど、開花するまできちんとした修行の描写をしていることが良いと思いました。
 元来、人の能力はその人間が積み重ねてきたモノの結果だと考えています。

③拡張性
 まさかの敗北エンドは驚きました。ただ、続編に繋げられるような含みのある終幕だったので、期待が持てます。尤も、この作品はこれで完結したほうが美しいのかもしれませんが。

④シンプルな能力戦闘
 ごちゃごちゃと解説の必要な能力は、読者を疲れさせてしまうものです。そこに至るためには相当の魅力がないと難しい。御作は魔法で編み出した剣と、補助を受けた浮遊盾というもので、先頭の場面を想像しやすく、読者の共感を得やすいギミックだと思います。
 ○○という理由でこの魔法剣は、鉄の剣より強い。という説明があればもっとスッキリしたのかもしれません。


気になった点
①性格
 主人公の性格が、一読して挑発的であると感じました。
 絶対的な優位を得ていない挑発は、下手をするとかませ臭を漂わせるものだと思いますので、匙加減にご配慮いただければと思います。
 兄に対して、ちょっと勢いづいた時点で挑発する行為は、これはフラグかな? と感じてしまいました。

②恋模様
 ネモさんと恋に落ちる理由が若干弱いと感じました。
 ネモさんが主人公を慕う理由は説明されていました。恋愛はインスピレーションで決める人から、長い年月を経過して気づく人など千差万別です。
 が、短編量の文書であることを考えると、読者に理解してもらうために、二人の間で象徴的な出来事があって、それを全面に押し出しても良かったのかもしれません。

③軍団規模の……
 戦闘において、どの程度の軍団がぶつかったのか、ちょっと謎でした。
 騎馬隊が前面に出てくる→野戦の中央突破かな? もしくはカンナエの戦い方式で両翼の機動戦力かな?
 と、運用にも頭を悩ませる場面もありました。
 崖上は兵を展開しづらい→騎馬隊が出てきた。という場面があったように思います。読み飛ばしていたり、間違っていたら申し訳ない限りですが、不自然では? とも。
 物語的には、主人公の魔法能力で起死回生というのが要点かと思いますので、あまり気にしないでください。

以上、よろしくご査収ください。
おいげん
 

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