かな子さんが隣にいるような感覚。

天然ボケの妻・かな子さんに振り回される主人公の物語です。

この物語の最も大きな特徴は、かな子さんがとても可愛いという点です。まるで桃色の綿菓子のような――もっと言えば、桃色の綿菓子を舐める女の子のような、ふんわりとした、ほんわりとした可愛らしさです。

かな子さんはかなりの変人ですけど、最近の創作物によくあるような奇矯な可愛らしさではありません。かなりエキセントリックな性格のはずなのに、妙なリアリティがあるのです。読み易いけれども軽すぎない文章のお陰でしょうか。まるで本当にかな子さんが隣にいるかのような感覚となってくるのです。

最も近い比喩を用いるならば、ゆるキャラの大きな抱き枕をぎゅーっと抱きしめたような感覚を味わえる作品です。

しかし、それだけではないのも作品の醍醐味ですね。『くまボンの恐怖』篇では、ちょっとヒヤヒヤとする感覚も味わえます。そこがまた、愛らしくてふわふわとした作風と相まって、この小説をより魅力的なものとしています。

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