人生に待ったはない。自分がどんな状況でも起こる出来事は容赦ないし、それを放っておくわけにもいかない。主人公日常が生々しい。そして痛々しい。自分のことも、従姉妹のことも、彼女のことも問題は山積みで、どうにもならないことだってある。でも、それでも頑張らなくていいから、なんとかやっていって欲しいと願う。筆者の描写、会話文から生み出される現実感が凄い。
仕事で神経をすり減らす。彼女は自分の主張ばかりだ。酷く疲れる毎日。そんな中、従姉妹が大変だと連絡が来た。クソみたいな日常を懸命に生きる若者のリアル。何気ない会話が本物の言葉でどんどん引き込まれていきます。
食べ物の生臭さが文章から漂ってくるほどに臭い立つ。それは、主人公の抱える息苦しさと相まって、邦画のワンシーンのよう。腐った食べ物は、滞留する人生にも似て、じわりと生活を蝕む。もはや防腐剤も消臭剤も無用だ。腐った食べ物は、うち捨てるしかない。
どうしようもない現実に痛めつけられた人たちの話。アル中で統合失調症の千歌。その面倒をみる羽目になった僕はいろんな面倒ごとで首が回らない。どうしようもないけれど、ほんの少しの希望を味わえます。
正確には恋愛なんて感情ではないのだと思います。ただ読み終わった後、彼女たちだけの思いが、これから積み重ねられていくのだろうなという、不思議な爽快感があります。文体は丁寧で理性的で読みやすく、センチメンタルを感じさせます。匂い立つ生活感と、人が生きているという生々しさが伝わってくる良作でした!3部で終わる歯切れの良さもソリッドでとてもいいです!
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