徹底して作り込まれた警察×本格ミステリ

密室殺人事件に立ち向かう刑事達を書いた警察小説。
作り込みが非常に凝っています。ミステリではおなじみ『見取り図』まで作者により手作りされてるカクヨム小説なんて、中々お目にかかれないのではないでしょうか。

本作の一番の魅力は、その王道な本格ミステリとしての完成度の高さでしょう。末節に至るまで物語づくりに手抜かりが無く、徹底して『丁寧』なんですね。入念な捜査とロジックの積み重ねで容疑者を絞り込み、真実を追究する様を丹念に書き切っています。
専門用語もどんどん出てきますが、読者に分かりやすいよう配慮が行き届いている。警察小説の雰囲気作りに成功すると同時に、全く読みにくいことがありません。
キャラクター造形もこれまた良い。『密室刑事』琴子はかわいく、ただかわいいだけの女性では決して無い。探偵役には欠かせない、強い個性を持っています。
責務を全うせんと奮闘する若手の薄井刑事も然り。脇役達に至るまで、様々な人物描写が印象に残ります。

段階を踏んで進展していく捜査。さりげなく配された手掛かりや伏線。束の間のエピソードも積み重ね、いよいよ突きつけられる『読者への挑戦状』――ミステリ好きも、特段そうでない人も、惹き込まれることは必至でしょう。
果たして、貴方は犯人を当てられるだろうか?(自分には無理でした)

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