彼女のためならば、どこまで堕ちても構わない

人が人の生命を、魂を操ることは許されるのか。それがたとえ、大切な人のためであっても?
人間の魂を操る術を得てしまった人々が織り成す、いびつで美しい物語でした。

なんと言っても、愛らしい存在感を振りまくヒロインの御影が可愛い。
彼女に対する主人公の桜花の葛藤と苦悩もまた、生々しく描かれていました。成熟した見た目と、庇護欲を掻き立てられる無邪気な子供の魂。そんな彼女のギャップに煩悶する様が読ませます。事情はどうあれ、どうしたって二人の関係は男と女。子供らしさが時にはコミカルですが、ハラハラさせられたり、男としての理性を試される一幕もあったりで、飽きさせません。
彼女を絶対に守る!と強い決意を抱く桜花ですが、ただ一人で少女を守らんとする姿は悲壮以外の何物でもなく。彼のあり方が果たして正しかったのか、そういう点も考えさせられるところですね。
二人の微笑ましいやり取りを読んでいると、いつまでも幸せでいてほしいと願わずにいられません。しかしどこまで行っても、物語全体を貫く不穏さが拭えない。油断ならないピリッとした緊張感が、非常に良い味です。

より多くの方に、物語の結末を見届けてもらいたいと考えます。

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