ふで始まってりで終わるヒロインを本気で期待して読んだ人間です。
実際はどうなのか。この先は君たちの目で確かめてくれ、というやつですね。
一見してライトなラブコメディの体裁に見えながら、ヒロインの可愛さや愉快な登場人物達のドタバタ感ばかりに頼らない、しっかり軸のある主人公のキャラクターで語られる異類婚姻譚。
もちろんヒロインの辰乃は非常にかわいらしい。見るもの全てに目を輝かせる、健気で大和撫子なお嫁さん。生えているのもチャームポイント。最高です。
対する主人公の美星が、これまた中々言い尽くせないキャラクターなんですよね。健気さを押し出したヒロインに対して、どこか仄暗い過去を感じさせる佇まい。そんな彼の視点での語り口ですから、読みやすく堅実な文体にもまるで違和感がないし、物語全体を通して落ち着いた味わいがある。もちろん彼がそんな風なのは理由があるわけで、そこが大人のラブコメたる所以。一体どういうわけ?と読者は気になっちゃう。先を読みたいと思わせるあえて違和感を残した描写・構成が巧みで、これがまた間延びしない丁度いい話数に収まってるときた。
いきなり人外な押しかけ女房が現れてさぁ大変なドタバタラブコメ、というありがちな定型に収まらない、バランスの取れた『大人のラブコメ』な雰囲気が醸成されています。
一風変わった夫婦の物語として、大変読み応えがありました。
タイトルやタグのいい意味でもくだけた軽妙さもさることながら、内容は萌えも乙女も心きゅんきゅんの正統派ラブストーリーである。
レトロな知識に純真な心のヒロインは、さながらドラゴンブレスが如き破壊力でもって読者のハートをブレイクさせてくれることだろう。
主人公の心に未だ影を落とす女性の存在も、愛情の悲哀を感じさせられる。偽り、与え、奪い、捨てて、それでも手放せずに。1番になれなかった者の、理解と別れ――バイクとバイオリンは、共に音を奏でられない。
夫婦肩を寄せ、未来へ一歩進むため。
差し伸べられた嫁の手を取り、けじめをつけて立ち上がる主人公の姿には、何故か当方、娘を嫁に出したお義父さんの気持ちである。
生えてる人にも生えていない人にもオススメ出来る素晴らしい作品。
無論、生えているおっさんである私もキュンキュンさせられたわけだが、まあ、それはどうでもいい情報である。
是非、どかてぃさんを助けてあげて欲しいものだ!