あの【滋賀県】が、一大スペクタクルを巻き起こす

この物語を読んでいて驚かされるのは、何と言っても発想力です。どれだけ滋賀県のことを愛し考えて生きてたら、このような一大叙事詩が生まれてしまうのか。

滋賀県と言えば琵琶湖――という薄い認識しか持たなかった私ですが、そういう派閥(?)のぼんやりした考えを、根本から改めさせる魅力を持っています。その認識の覆りっぷりたるやコペルニクス的転回……いや、他県民にこの喩えを使うことを許されるならば、琵琶湖のごとく大きく覆ったと言わざるを得ない。
滋賀県にまつわる数々の概念がゲシュタルト崩壊しかねない、パワーワードの乱打に打ちのめされること請合いです。

もう一つすごいのは、これだけ壮大でも最後まで面白く読めて、ハナシがまるで破綻してないことなんですよね。言ってしまえばかなり荒唐無稽なお話なのに、本筋は至って大真面目。なまじリアリティが凝ってるだけに惹きつけられてしまう。
特に印象的な知事なんて、存在自体がほとんどギャグなのに、妙に納得させられる存在感。

滋賀よ、一体どこまでやる気なんだ、と全貌がまるで掴めない。
そんな滋賀スペクタクルに、より多くの方が引きずり込まれることを、一読者の立場より願っています。

その他のおすすめレビュー

あさぎり椋さんの他のおすすめレビュー43