警察小説って何?って人はぜひ!―実力派の作者が描く極上ミステリ

警察小説である。新本格ミステリである。

舞台は、密室解明を専門とする『警視庁捜査第一課密室特捜班』。
主要コンビは、赴任したばかりの巡査部長・薄井顕と、警察庁長官を父に持つバリバリのキャリア・室井琴子。実は、この琴子さん、密室に関する特殊な性癖があって、なんとも悩ましい……いや、愛らしい。

警察小説には詳しくないが、たまに読むと「これは想像でそれらしく書いているな」と残念ながら興覚めした経験がある。
だが、本作にはその曖昧さやいい加減さが全く感じられない。
しっかりと下調べした上で描かれているのが伺える一級品だ。

名探偵が快刀乱麻に謎を解決するストーリーとは違い、刑事たちの地道な捜査が着実に解決へと繋げていく、犯人逮捕のシーンには思わず胸が熱くなる。新本格的な謎も提示されるが、幻想や想像には逃げず、余すところなくリアルな解釈で謎解きされる手腕には脱帽だ。

警察小説ってよく聞くけど何? というかたには、ぜひこちらをファーストブックとしてお読みいただきたい。
文章力、構成力、キャラクターの魅力。ここまで揃ってハイレベルな作品にはなかなか出会えない。本当である。

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