二時間ドラマで観てみたい一作

 物語は、主人公・薄井顕(うすいあきら)が、『警視庁捜査第一課特別室』に赴任するところから始まる。

 交番勤務からようやく念願の刑事となり、前途洋々に思えた薄井だったが、赴任先の室長は女子大生と見紛う見目麗しき年下の女性・室生琴子(むろおことこ)だった。
 これだけでも薄井の新米刑事生活が前途多難であることは窺い知れるが、加えて琴子は警察庁トップの令嬢で、密室フリーク。おまけに『特別室』は密室事件専門の部署とくれば、波乱必至だ。
 そこへ、おあつらえ向き? に密室殺人事件発生。早速『特別室』の出番となる。

 殺人現場は鍵のかかったマンションの一室で完全なる密室状態。更に、防犯カメラには被害者以外の人物が部屋に出入りした映像は残されていない二重の密室だった。
 はたして、新米刑事・薄井とお嬢様刑事・琴子は、『二重密室』の謎を解き、犯人を捕まえることが出来るのか?

 本作は、『新本格ミステリと警察小説のハイブリッド』と銘打ってはいるが、ただ密室の謎を解き明かすだけの推理物に留まらず、主人公の二人・薄井と琴子を始め、被害者、被害者の家族、関係者、そして犯人の心情を丁寧に描くことにより、人間ドラマとして成立している。
 願わくば二時間ドラマで観てみたい。
 『浅見光彦シリーズ』や『赤い霊柩車シリーズ』のようにシリーズ化して、また、薄井と琴子に会いたい。
 そう思わせる一作である。

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