とある児童養護施設でひとりの男が飛び降り自殺する。
奇妙なことに、遺体の傍らには一冊の絵本が落ちていた。
只の絵本ではない。
それは『読んだら死ぬ絵本』と噂されるいわくつきの絵本だった。
戦後間もない日本を舞台とした本作は、横溝正史の『金田一耕助シリーズ』、江戸川乱歩の『明智小五郎シリーズ』を彷彿とさせる。勿論、舞台設定だけでなく、舞い込んだ事件の不気味さ、不可思議さも含めて。
こう書くと、古臭い印象を持たれるかも知れないがそうではない。
レトロな雰囲気を纏いつつも、新しさも感じさせてくれる。
探偵・相馬蒼偉(そうま あおい)と、その幼馴染であり相棒であるフリーライター・佐々木沙希(ささき さき)のキャラクターが抜群で、二人のコミカルな掛け合いが陰惨な事件を中心に進む物語の救いとなっている。
また、本作はミステリーではあるが、謎解きだけに止まらず、その背景となる人間ドラマが際立ってる。
レトロで新しい、ミステリー&人間ドラマをお楽しみあれ。
極上の読後感をお約束しよう。
ホラーのようなおどろおどろしいタイトルですが、れっきとしたミステリーです。
舞台は終戦から数年後。
エログロ、カストリ、オカルトが隆盛を誇った時代です。
事件のきっかけになったのは一冊の絵本、その内容は愉快なようであり、奇妙でもあり。
そしてこれを読んだ者は死亡するという。
事実、転落死した男性は顔面の原型を留めないほどに破壊され、その傍らには例の絵本が――
はい、これだけでもう怖いですね。
しかしこの怖さと奇妙さに強く興味を引かれました。
その一方で、欧州かぶれのモダンボーイと勝ち気な美少女がタッグを組み謎に挑むというキャラミスとしての要素もあり、この二人の愉快な掛け合いからも、ライトノベルとして楽しむことができます。
作者様は「なんちゃってミステリー」と謙遜していらっしゃいますが、謎解きに至るまでの伏線の張り方や探偵による推理、そしてトリック……全てにおいて本作が正真正銘のミステリーであることを示しています。
秀逸なのはラスト。
最後まで残された謎が解き明かされ、さらには心地よい読後感まで演出してくれるというウルトラフィニッシュ!
恐ろしい絵本が、恐ろしくなくなる瞬間は手品のようでした。
ミステリーフリークも、そうでない方にもお勧めです。