その本に封じ込められていたのは、忌まわしき過去。

ホラーのようなおどろおどろしいタイトルですが、れっきとしたミステリーです。

舞台は終戦から数年後。
エログロ、カストリ、オカルトが隆盛を誇った時代です。
事件のきっかけになったのは一冊の絵本、その内容は愉快なようであり、奇妙でもあり。
そしてこれを読んだ者は死亡するという。
事実、転落死した男性は顔面の原型を留めないほどに破壊され、その傍らには例の絵本が――

はい、これだけでもう怖いですね。
しかしこの怖さと奇妙さに強く興味を引かれました。
その一方で、欧州かぶれのモダンボーイと勝ち気な美少女がタッグを組み謎に挑むというキャラミスとしての要素もあり、この二人の愉快な掛け合いからも、ライトノベルとして楽しむことができます。

作者様は「なんちゃってミステリー」と謙遜していらっしゃいますが、謎解きに至るまでの伏線の張り方や探偵による推理、そしてトリック……全てにおいて本作が正真正銘のミステリーであることを示しています。

秀逸なのはラスト。
最後まで残された謎が解き明かされ、さらには心地よい読後感まで演出してくれるというウルトラフィニッシュ!
恐ろしい絵本が、恐ろしくなくなる瞬間は手品のようでした。
ミステリーフリークも、そうでない方にもお勧めです。

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