ミステリ初心者の方に「何かおすすめの作品ってある?」と尋ねられた際、ミステリ好きな方の多くは、おそらく骨太な「本格ミステリ」の名を挙げてしまうと思う。
しかし、「本格ミステリ」の名作の多くは、料理に例えればフルコースに近い。様々な様式美やミステリの不文律(お約束)なども多く、実は十全に楽しむ為には、読み手側に知識や作法が求められるもの。
初心者にそんな物を進めてしまっては、胸焼けする事うけあいだ。
本作は、そんなミステリ好きが陥りがちな悪癖とは一線を画し、「読みやすい」という点に着目して作品を紹介し、更にはオススメポイントとあらすじを丁寧に解説して、初心者でもとっつきやすいように配慮されている。
エンターテイメント色の強い作品や、ミステリ以外のジャンルとして読んでも十分に面白い作品など、よく厳選されている。
そしてただ紹介するだけではなく、おすすめ作品を読んだ後の「デザート」として、ネタバレありのレビュー記事も添えられている。筆者氏がおすすめ作品のどの辺りに着目し、どの辺りを面白いと思ったのか、ミステリファンの視点で語られているので、ミステリ初心者への解説としても非常に興味深く役立つ内容になっている。
「ミステリって何だか敷居が高そう」と考えている方がいれば、是非とも本作を読んでいただきたい。
高い確率で「これ」と思える作品に出会えるはずだ。