たとえ心がえぐられても、「読んで良かった」と思える物語がここにある

 貧しい家の生まれであった主人公「僕」ことルギウスは、家族を失い、叔父に引き取られました。
 ある日、ルギウスがひとりで遊んでいると、太陽のような女の子が声を掛けてきました。これが、お金持ちの家のソレイユとの出逢いでした……。


 もしも時代が違ったら、このふたりは成長して、甘く切ない身分違いの恋物語を紡いだことでしょう。
 けれど、ここには戦争がありました。不治の病がありました。
 誰もが心の中に持っている「邪悪」が、頭をもたげる要因がそこら中にありました。

「邪悪」のはびこる物語は、読んでいて愉快にはなれません。
 けれど、決して目を背けてはいけない、忘れてはいけない。これは「読むべき物語」だと思わせるものがありました。

 ルギウスとソレイユが紡いだ物語は、この時代の、この国でなら、どこにでもある、ありふれた物語だったのかもしれません。
 ――いいえ。ふと振り返った私たちの後ろにも、この物語が横たわっているような気がするのです。

 この物語を読み進める中で、何度も辛く悲しい思いをしました。
 けれど、読了したときには「読んで良かった」と思いました。


 この物語を綴ってくださった作者様に感謝します――。

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