どこまでも真っ直ぐな祓い士の少女の、恋と成長の物語

物語の舞台は、古代の日本を思わせる、架空の国。
神々がおわす国、安万慈《あまじ》国。
祟り魔を祓うことのできる「祓い士」の可瀬が、病や怪我を癒やす「癒師」の真人に嫁ぐところから始まります。

父親に言われて嫁いだだけの可瀬にとって、真人は初めて会う相手。時代も時代ですし、恋愛結婚ではありません。
真面目な彼女は、自分が妻にと望まれた理由をしっかり確認し、忖度ない発言を……と、このあたりで、可瀬の真っ直ぐで潔い性格に魅了されました。
凄く、素敵で、良い子なのです。

……ただ、恋愛に関しては、物凄く不器用。
初めが、初めだっただけに、だんだんと真人に惹かれていっても、素直な言動ができません。
――いえ。逆に素直(ストレート)すぎて、真人に大ダメージを与えることも……。
読者としては、ふたりのやりとりは実に微笑ましく、そして、ちょっともどかしい。そこが良いのです。

この世界では、人の病が祟り魔と関係することがあり、癒師の真人は常に危険に晒されているような状態です。だから、祟り魔を祓える可瀬は、いわば「バディ」です。
恋愛面では、まだまだギクシャクのふたりですが、癒師&祓い士として、活躍するふたりは息がぴったりで、読んでいてワクワクします。
しかも、文章から垣間見える光景が、とても美しい!

――ですが、「祟り魔=悪いもの、倒せばよい」というわけでもないのです。
神々がおわす国らしい、いろいろと複雑な事情が……。

じれもだの恋物語であり、神と国を背景に「正しいこと」ってなんだろう? と、可瀬と一緒に考えずにはいられない、成長物語でもあり。
読んでいて、いろいろな方向に興奮しまくる、毎回の更新が楽しみな作品です。

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