伏線は縁側に座る老夫婦のようなもの

今日は伏線について、だらだらと述べてみようかと思う。

例によって初心者及び上級者には無用なものである。

比較的書きなれた中級者をターゲットとして書くものである。



さて、伏線とは何ぞや。


物語や作劇上の技術のひとつで、物語上において未来に起こる重要な出来事を、些細なかたちで前もって暗示しておく手法である。

読者や聴衆の失望を回避するため、あるいは感興を引き起こすために用いられる。

(wikiより)


早い話が「デウス・エクス・マキナ」を避けるための方策の一つだ。

デウス・エクス・マキナてのは、指輪物語、ホビットの映画みたいに、最後の最後でデッカイ鳥が大暴れして一件落着するようなことを言うんだが、読者的には「おいこら、聞いてねえ」「今までの苦労はなんだったんだ?」という批判にさらされるのである。


ザッケンナコラーと言われたくないので前もって「こんなことがあるかも、しれん」というお触れを出すのだ。

これを伏線と呼んでいるだけだ。


ぶっちゃけた話、伏線なんてなくっても話は作れる。

面白い話を構築するに当たって、必ず組み込まなければならないことではない。


ただ、組み込んであると「お、この作者、なかなかやるな?」と思ってもらえるメリットがある。

先の展開を明示する役割もあるので「こんなワクテカな展開が待ってるからそのまま読み続けるといいことあるよ」と宣伝できるのだ。

作中で温泉の話題が出れば「あぁ、この後にサービスシーンがあるんやろな」と思わせて、読者を引き込むことも可能だ。


あざとい?

これも技術の一つだ。

躊躇しちゃいかん。



さて、じゃあ伏線はどうやって作るんだ?

という疑問にあたる。


これについてはいくつかの方法があるし、作者ごとの張り方もあるだろう。

ということで、個人的な張り方を説明する。


伏線の役目が先の展開の暗示である、ということは、先の展開が見えていないと張れないものでもある。

おっと、難しく考える必要はない。


プロット、というものを作ったことがあるだろうか?

話の骨組のようなものだ。

作る人作らない人それぞれだと思うが、私は簡易的なものを作る派なので、プロットがある前提での話をする。


まずそのプロットであるが、私が作るのは最初と最後、及び、途中で必ず発生するイベント、だけだ。

私の性格もあって、プロット構築で会話だけ先に作っていると、いつの間にか地の文まで書いていて、結局最初から書くのと変わらないからだ。


最初をスタートとして、中継地点のイベントまで直線で結び、最後のゴールまで線を引く。

これがお話の最短ルートだ。

建築業界ではクリティカルパスというのだが、まぁ、それは放置しておいて。


固定イベントを決めて、それ意外はフリースタイル。

というのが、私のプロットである。

ただし、先は決まっている。

なので、伏線は、その決まっているイベントに向けたものを放り投げればいいのだ。


具体的に言うと

転生勇者が生れた村を出ることになるとする。次の目的地がお城のある首都としよう。王様の話を聞くイベントがまっているのだ。

お姫様に会うイベントもあるだろう。ここは外せないイベントだ。

ここで勇者が「よし、はやいとこ魔王をぶっ飛ばそう」とのたまっていきなり敵の本拠地にカチコミかけては困る。

お話が終わってしまう。

そこで「お城には対魔王の秘密武器があるらしい」という話を、見るからに〝怪しげ〟な人物が勇者に聞かせるのだ。

そうすると「そんな便利なものがあるんなら誰か魔王を倒せよ」と言いつつも、お城に向かうことになるだろう。

実際にはそんなものはなくて、裏で、この勇者に対する謀略が蠢いていたりするわけだ。


なんか伏線っぽくないが、即席で考えたので勘弁してほしい。

つまり、この「怪しい」という表現が伏線になる。

まっとうな身なりの聖職者だったりすると、伏線ではなくなってしまう。

あくまで、今後の天気は曇天だぜ、という暗示なのである。


伏線は、このように、あからさま、だけど、しれっと、埋め込まれているものだ。

例えれば、縁側でお茶をのんでる老夫婦のように、いい塩梅、なのだ。

目立たず、でも気がつかれるように、しかして埋もれては困る。

この加減で伏線は生きる。



さてここからは蛇足だ。


伏線ってのは、なにも先が決まっていることだけに張るもんじゃない。

適当に放り投げてもいいのだ。

私の場合、固定イベント以外はフリーダムな関係で、如何様な展開にも持って行ける。

であるので、適当に伏線のような何か、をことあるごとに転がしておいて、回収できそうなものだけ回収する、という手法も取れる。

これが一番お手軽だ。


伏線は、必ず回収しなければならないわけではなく、投げっぱなしジャーマンよろしく放置もできる。

伏線だと知っているのは作者のみ。

恐れずに、伏線をばら撒いてみよう!

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