キャラクターのささやき

キャラクターが「もっと見て」と囁いて来るので耳を傾けてみようと思う。


 そもそもキャラクターとは何か。

 wikiなんかだと


「物語などに登場する人物や動物など、あるいはそれら登場人物の性格や性質」


 と書かれている。小説では登場人物ということになるだろうか。


 小説に登場させるキャラクターを作るにあたっての注意事項は前提条件として省かせていただく。

 性別、名前、外見、性格、生い立ち。これくらいざっと決めておけば、まぁ、動いてくれるだろう。


 キャラクターにおいて大切な事。

 キャラクター自身を詳細に決めることは大事だ。が、何より大事なのは読者に覚えてもらう事だ。

 いくら苦労して作り上げたキャラも、読者に覚えて貰えなければ、まさに徒労だ。

 ではどうすればよいか。


 まずは登場の仕方だろう。


 昨今、名前だけで性別を判断するのが難しくなっている。それは小説の中でも該当するのではなかろうか。

 私が追いかけている小説で『アーサー』という名前の女性がいる。普通に考えれば男の名前だ。

 この様なキャラクターもいる。

 登場時にいきなり名前という固有名詞をぶつけてくる作品は少ないだろう。まずは三人称的に男、女という表現から始まる場合が多いと思う。

 もちろん台詞内で名前を言わせて地の文で説明、なんて方法もある。登場のさせ方は様々だが、性別ははっきりさせた方が読者は混乱しないと思う。


 次に外見だろうか。

 大体が初登場時にガサっと詳細に描写するだろう。まぁ、その時くらいしか詳しく書かないし。

 だが悲しいかな、細かく書いても読み手側は殆ど覚えていない。かく言う私も読み手として読み漁っている時も外見は殆ど頭に残らない。残るのは性別、名前だ。


 ではどうしたら読者の頭に残るのかを考えてみようと思う。

 自分をマネキン実験台として考えてみる。

 記憶に残るのは、やはり印象的に感じたものだ。強烈なインパクトを伴った事象というのは、短い間でも鮮烈に記憶に残るものだ。

 これを考慮すると、キャラクターを覚えてもらうには何かしらのインパクト、もしくは印象を残すようなキャラクターである必要がると考えられる。

 だからといって破天荒なキャラクターばかりではまともな話になるとは思えないし、逆に控えめで埋もれてしまうようなキャラクターばかりでは記憶に残らない。


 ここで私が良くやるのが、強調するという手法だ。

 小説で大切なのはリアルではなくリアリティ。本物っぽくあれば良い、ということ。

 キャラクターもぶっ飛び過ぎた人物でなければ、結構許容されてしまう。コメディものならぶっ飛び過ぎた方が良いくらいだ。


 では何を強調するのか。性格か、外見か、思想か、名前か。

 それはキャラクターの個性にも直結するので、コレといった正解は無い。キャラクターに合わせて考えるべきだと思う。

 食いしん坊であったり、必ず否定から入る人物だったり、まさかのゴム人間など、多岐にわたる。

 キャラクターのイメージを一言で表せるように、なんて格言めいた言葉がある。これは正解の一つだと思う。


『こいつは、こーゆーヤツだ。』


 これは記憶に残りやすい。

 英単語を思えるにも単語のみではなく、文章として覚えた方が覚えやすいのと一緒だ(個人的見解)。


 Aは食いしん坊大王だ。

 Bは底なしのスケベだ。

 Cは巨乳だ。

 Dは背が低い事にコンプレックスを抱いている。

 Eはネコスキーだ。


 良い例えではないが、まぁこんな感じだ。

 人間を一言で表すことなんかできない。当然だ。だが、一番強い特性は表せるだろう。


 まずはそれでいいんじゃないだろうか。


 キャラクターは話が進んでいくにしたがって変化する。これは成長であったり、ある出来事が原因で変わってしまったりと、様々だ。

 主人公等は成長することが殆どだ。考え方も変わろう。

 まずは登場時にキャラクターを覚えてもらう事が大事、だと思う。


 さらに一歩進めて、キャラクターを魅力的するにはどうすれば良いのか、というのを考えてみたいと思う。魅力的であれば読者の記憶に残る事だろう。


 文字のみで構成される小説において人物の描写には何があるかといえば、『台詞』『動作』『表情』だと思う。この際心理描写は脇に置いておく。


 さて気を取り直して。

 『台詞』『動作』は良く分るだろう。というか最低限必要だろう。これがないと、キャラクターが何をしているのかさっぱりわからない。


 『表情』


 これが結構忘れられてしまいがちだが、キャラクターを魅せるという点において、重要だと思っている。

 拙作のキャラクターは良く可愛いと言われる。書いている私にそんな気はないのだが、思い当たる節はある。

 私は『台詞』の後の地の文に『動作』と『表情』を一緒に書くことがままある。

 それとキャラクター同士の勢いのある言い合い以外では、なるべく『台詞』の間に地の文を入れるようにしている。

 キャラクターは、小説の中だけとはいえ「生きている」のだ。当然、言葉を発するときには表情も伴うだろう。

 表情豊かであれば、尚人間のように思えるのでは、という考えから感情の変化があるセリフや仕草などにはなるべく『表情』を書くようにしている。

 そして拙作のキャラクター、特に女の子は良く笑う。笑顔が多い。

 この事が「可愛い」と言われる原因かもしれない。


 沈黙でも『表情』で感情は察することできる。置かれた状況いかんでは、背中で語る事もできよう。

 台詞に頼らなくても、キャラクターは雄弁に語ってくれる。

 ただ、作者はそれをくみ取ってあげなければならない。

 その事によってキャラクターはより輝いて見え、読者の記憶に残る者になる、のかもしれない。


 いままでツラツラと書いてきたことは、一つの方法でしかない。他にも方法は様々だ。

 試行錯誤して、読者に自分が生み出したキャラクター達を覚えてもらおう、と思う。

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