怪獣の出現に、人々は戦々恐々としながらも強く生きなければならないのか?

 怪獣の襲来が、人々の日常になっている世界の物語。
 この世界、テーブルの湯呑みがガタガタと震えると、「地震? それとも怪獣?」なんて呟かなくてはならない時代なのだ。
 スマホに、地震ならぬ、怪獣の速報がイヤでも送信されてくると、人々は災害同様に速やかに避難を開始する。

 しかし、どこの世界にも、逃げ遅れる人は必ずいるわけで……。
 そんな人たちの安否を確認し、尻を叩いて避難を促す、正義感に溢れた民間人も少なからずいたりする……のだが?

 それは、本当に正義感からなのか?

 人の心理が秀逸に描かれ、人の真意に触れた時、この世界への失望感が、見事なほどに積み上げられていく。
 しかし、人とは、常に葛藤するものなのかもしれない……。そう思わせられたラストは、殊更に素敵だと感じることができるはずだ。

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