<15> Rihanna

 彼女の手元で開かれたロディアの遺言状は、初めてあたしの名前を世界に告げた。

 ロデリンダがささやいてくれた、あたしの名前とは違うけれど。

 それでもあたしがあたしの落魄を願って、今際のロディアにゆめうつつ、ささやき続けた名前をリアーナは世に明かした。

「”殿下”はあたくしどもの至宝。幾百年を受け継がれたこの人形には名があったと、あたくしも受け継いで初めて知りました。門外不出の口伝だったのです。しかしそれも一度は途絶えかけた。この事態を繰り返してはなりません。古くより女系であるがために、複雑に血筋を重ねてきた当家の家名は、かつて繰り返された政略結婚の末、ロデリンダという一人の令嬢の存在に取り纏められた。以降、彼女が家を再び分裂させないために据え置いた象徴である人形殿下の――名を、ガブリエル」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る