<10><11><12> Rebecca Ruth Rufina
ラインヒルデの遺した史書の記述と、ロデリンダを継ぐ伝統に、レーヌは異常に忠実だった。
一族の悲願を奪還した”女王”は、戦い抜いて刺されて逝った。
リベカとリュトとルフィーナ。あたしを愛した女王様とは対称的な死を得た女の、あどけない三人の遺児たちは、見事あたしの期待に応える。
「人形殿下、おきれいね」
「百年よりもっと前の方なんでしょ? ロデリンダ様って」
「わたくしたち、ロデリンダ様のかわりなのよね。殿下をお守りするのよね」
輝く瞳のレーヌの養女たちが、例えばあたしを憧れの王子様の姿にはしゃぐみたいに見つめた真夜中。
あたしは……どうしてだろう。彼女たちの面影に、初めてあたしを見つけてくれた、あの日のあなたを思い出した。
鬱陶しい程に光を背負って、ドレスの裾を億劫に引いて、長い髪を肩に広げて、館に届けられたあたしを迎えに来てくれたあなたはロデリンダ。
……ねえ、あのね。あたし、どうしてかね。その時あなたのこと王子様みたいねって、思ったのよ。人形師の雑多に薄暗い工房の奥と、箱の中しか知らなかった冷たいあたしを「お揃いだね」って愛してくれた、寂しく笑いかけてくれた、あなたはあたしの王子様だと思ったの。あなたはあたしのこと”救い主”だなんて名づけたけど、あたしにとってはあなたこそが、あたしを愛して命をくれた、父なる神様だったのよ。
……王座にこそは君臨はせずとも、高貴な名門のたったひとりの跡取りは、一門をまとめる“女王様“にしかなれなかったのにね。もうなにがどうなったとしたって、あたしがお姫様にはならないみたいに。
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