<13> Rhodeia

 三人娘が据えた跡継ぎは愚直に、あたしにとってはこの上もなく優秀に役目を果たした。

「抱いて逃げればいい! このままでは火が――失ってはいけないのよ!」

 忍び寄っていた戦争の気配は突然に暴発した。館も例外なく戦火にのまれた。

 あたしは数十年ぶりに硝子の棺から外へ。ロベルティーネが着せた服も剥ぎとられた。今や名跡の至宝であるあたしは、そうやって軍の押収を逃れた。

 ロディアはあたしの為だけに名前を偽って身を隠し、街中の片隅で何年も過ごした。足を悪くした。それでも隠れ住んだ。暴虐な為政者からあたしを守るためだった。

 一方彼女は一族と緊密に、張り巡らせた情報網と、政治への働きかけと、財と縁故とで戦った。

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