<17> Rocio

 私はそして、徐々に開かれてゆく社会にも晒されるようになった。

 それこそが私を守る盾になると、当代の女当主ロシオが考えてのことだ。

 不満はない。むしろ望ましい。

 こうして名と姿と逸話の披露目を繰り返し、存在価値を売り歩くほどに、私の悲願は急速に成就を見せていく。

 私がいずれ砕いてみせると誓った、ロデリンダを殺した病。孤独と呼ばれる膿んだ毒に、あなたはいつだって煩わされた。

 ”女王様”などという言葉の棺に押し込められた私の恋人。

 あたしを終まで抱きしめながら、あなたが自ら息を引き取った事実を、私は黙して語らない。語れない。語るつもりはさらさらない。

 けれどこうして今になって、私の存在が誇示される限り、あなたの名はもう孤独にはならない。

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