<2> Rosetta

 弔旗はためく館の奥で、あたしは静かに待ち続けた。だれが次の持ち主だろうかと、考え考え幾月も。病毒に長く煩わされた、あなたの愛した少女人形を、このあたしを受け取る人を。

「ロデリンダ嬢が死んだからには、偉大な純血もこれまでか。のこるは傍流ばかりなり、と」

「あの小娘、妙な遺言を残しおって。財産権利に土地館、全て人形の付属物だと?」

「各国王家とも血を連ねる、大陸屈指の名家ですのに。神聖な遺言をなんだと思われていたのやら」

「それで後継者はどなたです」

「さあ? だが若い娘の他は選んではならない。そして同じ響きの名に限ると。遺言なのだとか」

 廊下で広間で騒がしい声は、ロゼッタという名の跡継ぎが決まって、消えた。

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