<3> Ragna

 とはいえロゼッタは早々死んだ。あたしは少し落胆した。

 やっぱり遺産は魅力的で、あたしの部屋の外側は、権謀術数の泥沼らしい。

 病に苦しめられた、あたしのロデリンダ。国こそ持たずとも古い名家に、まるで女王様として君臨したあたしのたった一人の初恋。若くして逝かざるをえなかったあなたは、ただあたしのことをずっと、煌めく光を見つけるみたいに愛してくれた。

 だったらあたしはあなたの望みを叶えるし、あなたが憎んだ病を砕く。あなたに深く愛されただけのあたしは、あなたとのさよならには抗えなかったけど、末期の瞬間まで愛されたあたしなら、きっといつか。

 そして遺産であるあたしは、あなたとあたし、二人のために、あなたの遺言にそぐわない後継者を心から拒む。

「後継候補のラグナ氏が、死んだそうだ」

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