<5> Robertine

 リーケが育てた亡兄ラグナの遺児は、父親の無念を忘れなかったらしい。叔母の死後、父の夭折の理由を恐れながらも、血筋の者であるからと、次世代に受け継がれたロデリンダの遺言へ娘を差し出した。

 人身御供のロベルティーネは若いといっても、その頃二十をこえた娘だった。人形遊びはもうしない年頃。

「この服、古いわね」

 ロデリンダがあたしの体と一緒にあつらえてくれたドレスの裾を裂いて、ロデリンダが一番に愛してくれた髪を短くしたのは彼女だった。

「君もいつまでも時代遅れじゃあかわいそう」

 あたしのことも自分と同じ生贄だと彼女は思ったのかも知れない。きっと自己憐憫と同情だった。生贄のロベルティーネは、いつだって彼女が憧れ続けた、その頃の身軽な流行の後ろ姿さえ許されなかった。

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