自ら変わることを知らぬ街

戦争は終わった。
だからと言って、人が死なないわけではない。
故意に殺されることはなくても、戦闘機の墜落に巻き込まれて死ぬことはある。
米軍基地に隣接し、そんな仮初めとも呼べる平和を手にした街の一夏を、少女の視点で描いた物語です。
大人たちのように慣れきってしまうことも、自ら変わることも、外部からの変化を許容することも出来ず、かといって次に戦闘機が堕ちてきたら自分が、もしくは近しい人が死んでしまうかもしれないという漠然とした恐怖を抱いたまま、淡々と綴られていきます。
そんな思いを抱えたまま、きっと何かを変えることも変わることもせずに、彼女は大人になっていくのでしょう。

「平和」を掲げながらも漂う重苦しさに、考えさせられる作品です。

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