ひとつひとつ、丁寧に

不登校になってしまった女子高生が、ある日現われた『魔女』によって
少しずつ心を研ぎほぐされていく物語。

どこかぎこちない家庭内の描写は淡々としつつ、少しずつ真綿で首を絞められていくような息苦しさを克明に伝えてくる。
かつて親と境界のなかった――あるいは境界を作っても、当たり前のような顔でそれを乗り越えられてきた子供たちにとっては、ユキノと母親のやりとりの一つ一つが心にちくりと刺さるかもしれない。

そうして強張ってしまっていたユキノの心を、ニワトコさんやネコばあさんを初めとした人々が優しく解きほぐしていく。そして彼らとの交流でユキノは生きる道を見出し、外の世界とも少しずつ向き合っていく。
癒やしの物語であり、確かな自立の兆しを描いた物語。

作中に登場する料理は風変わりな和食から、伝統的なメニューまで様々。個人的にはルバーブの塩煮が練り梅の味に近いというのには驚いた……。
特に心に残っているのはジンジャー・エールと、ケジャリ。
どちらも実際に作りたくなるくらいに美味しそうに描かれているだけでなく、作中での登場シーンが印象深い。

心とお腹を刺激する良作です。

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