冒険の日々に、誰かの筋書きなんていらない。

何者かに導かれ、主人公たちは異世界へ。しかし、いざ旅立ちというその瞬間、彼は気付きます。「いや、ちょっと待て。何かがおかしい。」と。冷静になれば次々と浮かんでくる疑念、違和感、そして明らかになる不自然さ。しかし、仲間達にそれを説明する時間はなく。かくして主人公は独り、「何者か」のシナリオを外れて動き出します。

まずは、生きること、暮らすこと。異世界英雄譚ではすっぽり抜け落ちてしまう、本来当たり前のことを頑張る主人公。基本的に慎重で、そして地味。それなのに描写は生き生きとして退屈させず、生活感溢れる異世界の日々をテンポよく読ませます。そして時折訪れる大きなトラブルは主人公の旅の転換点となり、物語をまた次のステージへと誘うのです。

なお、いきなり街のヒーローとか、救世主とか、そういうのは無しの方向で。ご都合無し、ハーレム無し、そもそもヒーローじゃないですし。ただコツコツと、日々を着実に、堅実に。これは、あるいは英雄譚の登場人物であったかもしれない主人公が、レールを外れて歩き出す、地に足のついた冒険譚。用意された列車の窓からは決して見えない景色、その足で歩くからこそ見える世界を、どうぞお楽しみください。

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