人間のキレイ、キタナイが通用しない。ここはケダモノシティ

 主人公は植物精霊(ドライアド)の娘、エコ・ランチェスター。
 物語冒頭、彼女が堆肥を手づかみで畑に撒くシーンが描かれている。
 これが本作のファーストインパクトとして、強く心に残る描写となりました。
 人間であれば手袋を用意して作業を行うが、「ケダモノ」である彼女にはそうした概念はなく、栄養として大地に交われば、それは例外なく「土」であるという感覚。
 こうしたメタファーは物語が進むと、さらに明確となっていきます。
 勢力を衰退させた人間世界から隔絶し、多くのケダモノたちによって日々、運営されている疑似人間的な社会構造。
 その中で主人公は、死体処理を主な役割とした神官としての使命を担っている。彼女の能力によって、この街で死せる者は『誰であろうと等しく土に還る』……。
 その様子は作者の静謐な筆致によって、とても残酷にとても美しく描写されています。
 原初の社会。ヒトでない者たちが人のように息づく世界で繰り広げられる、死と還元のサイクル。それを描いた物語であると感じられました。

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