慈悲深き単眼シスター・エコの、健康で文化的な最低限度のケダモノ生活

この作品を紹介するにあたって真っ先にお伝えすべきなのは、物語の世界観を描き出す筆致の見事さです。

舞台となる「ケダモノシティ」の社会や文化、そこに暮らすケダモノたちの生態や生活が、正確で美しい文章によって綴られています。
読むほどに情報が整理され、この世界の仕組みが余すところなく脳内に構築されていく感覚は圧巻。隅々まで神経の行き届いた端正な文章は、お手本にしたいほどです。

また、主人公であるドライアド(植物精霊)の単眼シスター・エコのキャラクターも素晴らしい。
注目すべきは、彼女が死者を『喰らう』ことによって弔うシーンです。
グロテスクでありながらもどこか美しさすら感じるのは、彼女がきちんと生を尊んで死を悼み、自らも自然の理の一部として生きようとしているからのように思います。そうした姿勢が、とても好きです。

更には理不尽に暴力を受けた際の無慈悲さが凄まじい。普段は理知的で慈悲深い分、そのギャップが恐ろしいです。
たぶん、間違いなくエコちゃんが最強なんじゃないですかね……逆らったらヤバイことになりますよ。
単に優しいだけではなく、社会の善悪の理を正しく行動原理としている点も、魅力的です。

ますます深みを増していく物語。この先も要注目です!

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