第6話 「三途の川」はワームホールか
人が死ぬと、その魂は極楽浄土に行く前に「三途の川」を渡るとされている。三途の川は誰も生きたままでは体験できないが、いわゆる臨死体験をした人が、暗くて長いトンネルを通ったとか、まばゆいばかりの光の中を歩いたとか、語ってくれている。
宇宙物理学によると、いま我々が住んでいる宇宙空間は、ゆがめたり伸び縮みさせたりすることができる。このことはすでにアインシュタインにより理論的に証明されており、また現実に観測によっても確認されたことから、間違いのない事実である。
そのゆがみを極端にしたものがブラックホールである。物質が極度に高密度に凝縮されると重力が無限大に近くなり、近づくものは光でさえ飲み込まれてしまう。ゆえにブラックホールと名付けられたこの天体は、実際に銀河の中心や超新星爆発の後にその存在が確認されている。
このブラックホールの底のさらに奥底が破けて別の空間とつながったものをワームホール(虫食い穴)という。どのような状態かイメージするため、膨らんだ風船を両手で持って、割らないように両端から指で押していってみよう。どんどん押して、慎重に最後は指と指がくっつくところまで行ったとき、中の空気が抜けないようにゆがんだ風船に穴をあけてトンネルにしてしまう。少々たとえが悪いが、ワームホールとは風船の両端をつなぐこのトンネルのようなものである。これで風船の端から端まで回り道をせず一瞬で到達することができる。
この宇宙空間にもこうしたワームホールは無数に存在しうることが理論的には証明されているが、まだ実際には観測されていない。
三途の川とは、このワームホールではないかと推測される。死者の魂は、極楽浄土に到達するために十万億土を旅すると言われているが、この距離は10億光年にも相当する。これだけの距離だと光速で飛んでも10億年はかかるが、ワームホールを使えばほんの一瞬で到達できる。
ただし、ワームホールはその存在が極めて不安定で、エキゾチック物質を使って補強しないとすぐ潰れてしまうと言われている。エキゾチック物質とは負のエネルギーを持った物質で、理論的にはその存在が証明されている。巨大な重力のため押しつぶされそうになるホールを内側から支え、その反発力で穴を広げる方向に作用する。このエキゾチック物質こそが、三途の川の渡し賃「六文銭」なのである。
この六文銭はなぜ6枚も必要なのか。第5話を読んだ賢い読者ならもうお気づきであろうが、塞がないといけない穴が6つあるからである。余剰次元は6方向に広がっており、魂がワームホールを通過中に余剰次元の方向に穴が開いてしまうと、極楽浄土に到達する前にこの世界から落ちこぼれてしまう。そうならないように、六文銭(エキゾチック物質)を使って余計な穴をふさぎ、魂を正しい方向に導くのである。
※またまた途方もないこじつけであるが、「三途の川」を現実世界に当てはめようとすると、このような解釈にならざるをえませんので、そのようなものとしてお読みください。
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