第5話 「6」という数字が意味するもの
仏教では六道、六文銭など、「6」という数字がよく出てくる。一方、キリスト教においても「666」は不吉な数字とされる。
全く異なる宗教で、なぜ「6」という数字が繰り返し出てくるのだろう。
仏教における六道とは、天上道、人間道、地獄道、修羅道、餓鬼道、畜生道の6つを指し、人の魂は生前の業によりこの6つの世界で輪廻転生を繰り返すとされている。また六文銭は三途の川の渡し賃とも言われ、有名な真田家の家紋ともなっている。一方、キリスト教における「666」はヨハネの黙示録に記された「獣の数字」ということで不吉とされている。
またユダヤ教では六芒星は「ダビデの星」と呼ばれ、魔よけの効果があると信じられており、イスラエル国旗のロゴマークにもなっている。
実は、この「6」という数字は、素粒子物理学においても非常に重要な意味がある。現代素粒子物理学の最先端の理論である「超ひも理論」では、この世界は我々が体験できる四次元時空に加えてあと6つの余剰次元があり、次元は全部で10個あるとする。
(超ひも理論はあまりにも難解なのでここでは詳述することはしません)
我々は、今いる空間で前後、左右、上下の3方向に動くことができる。これをもって、我々は3次元空間に住んでいると称する。これに時間という次元を加えると4次元になる。超ひも理論はこの4次元に加えてあと6つの次元があると仮定している。勿論そんな世界を体験した人もいないし実証もできていない、あくまで数学的に導き出された理論上の考え方である。でも、別にSFの世界の話ではなく、大真面目な学問として研究されている。
では、そのような6つの余剰次元はどこにあるのか。超ひも理論では、これらの余剰次元は空間の各点において小さく折りたたまれていると説明する。何のことかさっぱりわからないという方のために、分かりやすい例えを使って説明しよう。
今、我々が住んでいる空間をサイコロのように細かく切ってゆくとどうなるか。1立方センチメートル、1マイクロ、1ナノ、……というようにどんどん小さくしてゆくと、果てはプランク長さというレベルまで細かくなると言われている。プランク長さとは、1センチの1兆分の1兆分のそのまた1兆分の1くらい、要するに電子顕微鏡でも絶対見えない原子よりもはるかに小さい大きさである。今のところ、このプランク長さが最小単位とされている。
で、先ほどの6つの次元はこのプランク長さの空間の各点において小さく折りたたまれて隠されていると説明される。少しイメージしにくいが、空間の各点に6本の骨がある折畳み傘があると想像すればいい。我々はいまこの折畳み傘の先の部分だけを見ていて、骨の部分は全く見えないし、またその方向に進むこともできない。
ただし、ここからが重要なのだが、エネルギーだけは次元の壁を越えて余剰次元の方向にも伝わるとされている(超ひも理論では、重力子という力を伝える粒子だけは次元の壁を超えるとされる)。もし、輪廻転生の過程で、あなたやあなたの体を構成している原子が対消滅を起こしてエネルギーに変換されると、この6つの余剰次元のいずれかに落ちるということもありうる。余剰次元の中の物理法則はいま我々が住んでいる空間とは全く違う性質かもしれないとされており、存在自体が消える可能性もある。
仏教で言うところの悪いことをすると地獄道や畜生道に堕ちるというのは、この余剰次元に落ちるということを意味し、キリスト教で言うところの「666」が不吉だというのもそういう文脈の中で語り継がれた可能性はある。ただし、地獄に堕ちるとか不吉だというのは人間が勝手に作り出した話であり、我々が死後にどこへ行くかは物理学とは関係のない話である。
※あまりにもこじつけ的で到底信じられないという方はそのようなものとしてお読みください。超ひも理論自体、まだ完成された理論ではなく、もちろん実証もされていません。
(追記1)
実は、我々の住む世界で、この「6」という数字が特別な意味を持つという物理学的証拠がある。雪の結晶、柱状節理、芳香族のベンゼン環など自然に正六角形ができるという現象である。さらに、光もまた光源から正六角形方向に放射する(人工現象を完全に取り除くため、裸眼で、ロウソクの炎や太陽の反射光などの自然の光源を見ること、特に小さい穴を通して光源を小さくするとよりハッキリします。)。また、時間や方位についても、10進法ではなく60進法を用いる。なぜであろうか。
これらについては、専門家の間でいろいろな説明もなされているが、本当の意味で、その理由を正確かつ理論的に説明したものはない。「なぜなぜ」と突き詰めてゆくと、最後は「そういうものだからです」というあいまいな結論になる。
でも、6つの余剰次元が存在し、そのそれぞれの方向から均等に重力の漏れ出しがあるとすれば、自然に正六角形ができるという現象にも理論的な説明がつく。この余剰次元からの重力の漏れ出しは、先に述べた「重力子」が発見されれば、解明される可能性が高い。
このお話につき、多くのご意見も頂戴しておりますので、さらに付言したいと思います。アインシュタインはおよそ質量のあるものすべての周囲では重力のため空間が歪むと予想しました。極端な話、原子1個の周辺でもごくごく微細ながら空間は歪んでいます。問題は「鶏と玉子」の話に似ており、「物質が先か歪みが先か」ということです。もし空間の歪みが先で、その歪みに沿って物質が形作られているとしたら。
たとえば、星形のクッキーを焼くときは、まず星形の型枠があり、そこに溶いた小麦粉を流し込むことで星形のクッキーが出来上がります。また池に水がたまるときも、まず窪みがあって雨が降って初めて我々は池の形を知ることになります。
もし我々の現実世界にも目に見えない余剰次元からの重力の漏れ出しがあり、その結果空間が歪んでいるとしたら、その歪みに沿って物質が形作られている(あるいは光も歪みに沿って進む)とも考えられます。これはまだ仮説にしか過ぎませんが、空間を歪ませているエネルギーこそが「未知のダークエネルギー」である可能性もあります。
(追記2)
難解で分かりにくいというご意見をいただいておりますので身近な例でさらに説明を加えます。テレビやスマホの液晶画面が実は小さな点(画素)の集まりだということは皆さんもご存じでしょう。実際、拡大鏡などでスマホの画面をよく見ると小さな点が集まって見えます。この各点において電気エネルギーを光エネルギーに変換することで、我々はテレビやスマホを見ているのです。遠くから見るから映像として見えるのであって、ごくごく近づいて見るとただの明暗にしか見えません。
超ひも理論は、我々の現実世界も似たようなもので、空間の各点において余剰次元から漏れ出したエネルギーが創り出した幻影のようなものだと考えます。巨視的に見ているのでモノがあるように見えるのであって、テレビやスマホと同様に超微視的メガネで見るとただの明暗にすぎないというのです。この摩訶不思議な考え方は、最近では「ホログラフィー理論」と言われるさらに進化した理論に発展しています。それについては、このお話の最終章「補論2 究極の無、ホログラフィー理論」で詳述します。
(追記3)
正六角形現象につき柱状節理やハチの巣については数学の「詰め込み問題」で証明できるとのご意見をいただきましたので、解説させていただきます。
「詰め込み問題」とは、決まった大きさの箱に缶ビールなどを最大何個入れられるかというクイズなどでよく見かけます。例えば「5個×8列」で40個入る箱にあと1個の缶ビールを追加で詰め込めるかというクイズです。答えは缶ビールを少しずらして5個・4個・5個・・・というように交互に並べてゆくと全体で9列になり41個入るという結果になります。
問題はこの時の缶ビールの配置が正六角形になっているという点です。数学的にも円と円のすき間の面積はこのケースが最小になるそうです。つまり丸いモノを狭い空間に詰め込んでゆくと互いに押されて自然に正六角形を形作るように並ぶということになります、
ハチがこうした原理を知っているのかは分かりませんが、何千万年と巣作りをしていると自然にこれが一番効率がいいと悟ったのかもしれません。柱状節理については結晶の生成過程で最初は円形で始まったものが互いに押し合いをしているうちに自然に正六角形の形で冷え固まるということで説明できます。
ただこの原理では単発で生じる雪の結晶やベンゼン環がなぜ正六角形になるのかや光の放射が正六角形になるということへの説明には使えません。
(本文中の説明が一部誤りであった点を認め、記録に残すため本文はそのままにしておきます)
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