自分と向き合う辛さを丁寧に描いた傑作

自分には、ほんとうは才能などないのではないか──これは、創作に携わるものなら誰でも一度はもったことのある恐怖だ。
そんなことはない、と心の中で打ち消していても、圧倒的な「本物」の才能の輝きを目にしたとき、創作者は徹底的に打ちのめされ、惨めなまでに萎れてしまう。そして、天才を受け入れることのできない自分の小ささにもまた、ショックを受けるのだ。
この作品は、そんな残酷な現実を突きつけられた主人公の挫折と再生を描いている。自分の小ささを知り、それを苦い思いとともに飲み込んだところからが本当の勝負のはじまりなのだ。

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