まるで、なんでも吸い尽くす“バンパイヤ”のような父さん。
- ★★★ Excellent!!!
○○ハラスメント。日本人が金持ちだったころには、あまり使われなかった言葉ですが、今では世間的に定着しました。セクハラ、パワハラ、モラハラの他にスメハラ、ブラハラ、カラハラなんてのもあるらしく、その種類は数十に及ぶとか。職場だけでなく学校やプライベートでも使われるそうで個人の権利と立場は随分と守られるようになりました。
もちろん、社員の言い分を全部聞いていると立ちゆかなくなるのが企業ってもんで……そのへんは難しいですね。最近は人を叱るのにも苦労する御時世となり、ちょっと熱心に指導するとパワハラだと言われる始末。でもねー、偉い人たちがやりたい放題やってた時代もあったわけで、そのころに比べりゃまともな社会になったのかもしれません。まァ、世の中全部が“脱ハラ”したわけではないのですが。
あ、ちなみにラーメン好きな私が理解できないのはヌーハラ(ヌードルハラスメント)なんですよ。いいじゃねぇか! 麺をすするとき音くらいするだろ! と言いたくなるのですが、耐えられない人には耐えられないらしく……豪快にかッこむから美味いんじゃないかなァ? え?駄目ッスか? 行儀悪いのかな俺?
本作『父さん、会社を倒産させたんだ……』。父さん、とは戸籍上の父親ではないのですが、とある理由で主人公の譲くんから父さんと(陰で)呼ばれているお方。本名は杉浦左京……え? どっかで聞いたような名前だな、ですって? それね、たぶん気のせいじゃありませんよ。日本人なら誰でも知ってる国民的作品を上手にパロるのが作者、叶良辰さんの芸風ですもん。
父さんは権利の主張力と保身の技に長けた人物。でも英語は苦手(笑)。おそらく本編以前から会社クラッシャーだったみたい。それに振り回される譲くんの苦労と苦悩を描く本作はリアリティある取引、人間描写を基調として意外と(失礼!)シリアスに話が進みます。もはや不死身のモンスターと言ってもさしつかえない父さんの姿に恐怖してしまう。“お仕事サスペンスドラマ”と言って良いでしょう。
ああ、そういえば父さんの中の人はサスペンス作品の常連でもありますねぇ⤴(ここで何故か語尾が上がる)。実は私、父さんの中の人のカリフォルニアコネク○ョンという曲がカラオケの十八番でして……それを本物より上手く歌える(笑)というのがささやかな自慢だったりします。
でも若い人は父さんの中の人が歌手だったことを知らないらしく「誰の歌?」「え?あの右京さんの歌なの?」「ポイズンのほうなら少しだけ覚えてるw」「つか、口でいうほど上手くないじゃん」と返ってくる始末。個人の権利が認められたこの御時世、若者がおじさんに対して“言いたいことが言えるこんな世の中”(笑)になったみたいです。ジェネレーションギャップというやつですな、わははは……(泣)
……あれ? なんでこんな話になったんでしょう? 本作は某刑事編とも、某特命係とも、まったくこれっぽっちも全然関係ないはずなのに。妙ですねぇ⤴(笑)
コメディの仮面をかぶった社会派ホラー(けっこう怖いんですよ、これ)ともとれる本作は現在、第二章が終了しており、いよいよ最終章に入るとのこと。今後どうなるんだろ? 父さんにはなんらかの謎がありそうで譲くんも疑問に思っているようですが、それがあきらかになる展開かなぁ? 叶さんの一人称小説は視点が動かないので、譲くんが父さんの過去に迫っていくのかも。そして血で血を洗うような凄惨な対決に?
ひょっとしたら、どっちかが死……いやいや、考えないでおこう。これはお仕事モノだからね。正々堂々と口喧嘩を制したほうが勝者ですよ、うん。
でも……
「あ、譲くん。最後にひとつだけよろしいですか? グサッ……!」
追いつめられた父さんならやりかねん(汗)。キレると何やらかすかわからんとこあるし。
つか逆の展開もあるかも……
「左京さん……グサッ……!」
「君に刺されるなんて、あ〜、お恥ずかしいったらありゃしない」
これは、さすがに無理があるか(苦笑)