ミスリルの腕輪2

 淡々と、ヴァルッテリが告げた。

「俺の魔力は、過剰分をこのミスリルの腕輪が吸い取っている。そうしないと、周囲に漏れて、危害を加えるからね。この腕輪には追尾機能が付いていて、俺がどこにいようと、父上と陛下には分かる仕組みになっているんだ」

「あら、まぁ。余剰にあるというのも大変なのですね。わたくしは魔力というものが一切ありませんので、分かりませんが」

「随分あっさりと言ってくれたね。過剰分を吸い取ってくれているおかげでこうやって町中を見れるし、他者と付き合いが持てる」

「正直、ヴァルッテリ様の魔力なんてどうでもいいんですの。問題は追尾機能ですわね。その内容を知ることが出来るのは、お父上と陛下のみですの?」

「……何が言いたい?」

「ありていに言えば、その機能を悪用できるのでは、ということですわね」

 マイヤの言葉に、ヴァルッテリの顔が強張った。



 思い当たる節はある、そう呟いたのはアハトだった。

「それを制作したのは魔道具制作を一手に引き受ける魔導省です。そして術式を組み込んだのは魔術省にいる筆頭魔術師。そこで何かしら仕掛けていれば……」

「盗聴も頭に入れておいた方がよろしくてよ。この距離を盗聴できるか否かは定かではありませんが」

 聞かれていることを前提に、地面に書く。そしてすぐ様消した。

 王国、帝国共に敵がいる状態のマイヤである。ここは動くに限る。

「ヴァルッテリ様、どうせですから当領地特産の薬草を見てみませんか?」

 楽し気に笑いながら、マイヤは提案した。是が非でもこれに食らいついて欲しい、いろんな意味で。

「ご一緒しよう。どうせだから、ギルドでクエストも受けていこうか」

「え!?」

 ヴァルッテリの言葉に、久方ぶりに驚いたマイヤ達である。

「俺の来歴伝わってないのか。現在は近衛騎士団所属、成人する前、つまりは学院にいた頃は持て余した魔力と剣の鍛錬兼ねて冒険者やってたよ」

 現役でギルドカードがあるという。


 余談だが、マイヤも採取した薬草査定のために冒険者ギルドに所属し、薬販売のために商業者ギルドにも所属している。

 もちろん、主に付き合うウルヤナやベレッカたちも所属している。


 ……のだが。

「大概規格外だね。貴族の令嬢が二つのギルドに所属しているとは」

「あら、ヴァルッテリ様こそ、学院の勉学をほったらかしで冒険者をやられていらしたのですか?」

 人はそれを五十歩百歩という。



 初めて、従者たちの心が一つになった時だった。

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