第3話

 マイヤから見た使者であるウルヤナの感想は「あ、こいつ信用ならん」だった。

 上から目線、高圧的、自己中等々。悪いところをあげていけばきりがない。向こうからしても、こちらが信用ならないのかもしれないが。十年くらい前に再度戦があり、帝国が勝った。そこで力関係が逆転し、帝国の属国扱いになっているはず……である。


 マイヤはそういう意味では異端なのである。帝国貴族の母親と、王国貴族の父親。デビュタントで嫌というほど悪意ある視線を向けられた。

「マイヤの髪の色がグラーマル王国にないからというのもあるかもねぇ」

 のほほんと話す父親だが、しっかりと守ってくれた。それ以来、マイヤ自身が魔法をほとんど使えないこともあり、「あんなくだらない社交界に出なくていい」と言ってくれた。

もっとも、ダニエルが一人分しか移転できる魔力がなかったことに由来し、出席するために馬車を使って半月も揺られるのが苦行で、ダニエルが一往復で降参した、というのが実情だ。

 マイヤもこんなくだらないことをするのが王侯貴族なら、二度と関わりあいたくない。そう言って、領内の内政に精を出したのだ。

 祖父も大変喜び、「為政者としてのイロハを叩きこみ終わるまで死ねぬ!」と言い、本当に叩き込むだけ叩き込んだ後に他界した。その根性に領民までもが喝采を送るとともに呆れたものだった。

「明日には婚約者候補の方がいらっしゃるのよね」

 移転魔法を使ってさっさと来るらしい。どうせなら、破棄してさっさと帰っていただきたい。さすがにそれは口に出さなかった。父や執事たちにはばれていたようだが。

「わたくしだって暇じゃないのよ。女は暇だと思って急にいらっしゃるんだから」


 ……一応、帝国側からは半年も前に打診されていたという事実を、ダニエルもマイヤも知らない。



 かくして、初の婚約者との対面に臨むことになった。

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