日常と地続きの非日常、非日常のなかの日常

 この物語がなにの話なのか、私には上手に語れません。
 主人公は高校生の想子。転勤族の娘で、ひとりっ子。転校が多くてともだちと長く一緒にいられないこともわかっていて、どこかシニカルな目線で世の中を眺めているような女の子です。
 そんな想子ですが、転校先の山口県で、はじめて(?)心をゆるせる友達に出会い、好きな人に出会い、しかし、別れの日はまたやってくる。「姉がほしい」という呟きは、ドライな関係を保ってきた母親への、小さな反抗のようなものだったのかもしれません。
 かわいくてちょっと変わり者?魅力的な主人公に心を掴まれているうちに、風景は一変します。
 本当に自分には姉がいるのだと知った想子は、姉を探す旅へ、そして・・・。

 多感な少女の日常生活の物語だと思って読み進んでいると、いきなり、そう、道をあるいていたらいきなり目の前に海がひらけるように、さっと舞台は非日常へと移ります。
 そこから先の怒涛の展開は、ただ読んで体感してほしいと思うのですが、この物語の素晴らしいなと思うところは、ポッと非日常に放り込まれるにもかかわらず、決して置いてきぼりにはされなかったというところです。
 それは、著者の筆力でもあると思いますし、ただ単純な文章能力というのに限らず、主人公の気持ちの揺れ動きにしっかりと、誠実に寄り添って最後まで書かれているからだと思いました。

 にゃんしーさんの小説は、とても、人間らしいなと思います。不安定さや強さやドロくささ、情けなさ、いろいろが混ざり合った人間は、なんだかいとおしい。
 この物語がなにの話なのか、私には上手に語れませんが、
ファンタジーなのかもしれないし、ガールズ・ラブかもしれないし、でも、そんないろんなものがないまぜになった、人間のお話かなと思います(水竜も出てきますが)。さみしさや、せつなさ、悲しみ、怒り、愛、いろいろがまざりあった、苦しいけど、なんだかいとおしいお話です。
 最後まで引き込まれて読ませていただきました。読み終えて、とりあえずエンターサンドマン、youtubeで検索しました。(^^)

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