そこに生きる人々が見える

舞台は江戸、千住宿。
これだけで「私時代劇嫌いor苦手だし~」という人は敬遠するかも知れない。
でも、そんな人にも是非読んで欲しい。読まなきゃ損するよ!

行方不明になった兄を捜して江戸に出て来た結衣。彼女は泣き虫で、ちょっとしたことにもすぐ涙をぽろぽろ零すけれど、それは心が優しく温かい情に厚いからだろう。
そんな結衣が危険な目に遭っているところを助けてくれたのが、ちょっと訳ありの口入れ屋の男相模。
結衣は相模の下で炊事などをして働きながら兄の行方を捜すことに。
相模のいる榮屋に出入りするのはやはりちょっと訳ありで、強面な男達が殆ど。初めは怯えていた結衣も彼等の優しさや気の良さに触れ、次第に慣れて気さくに接するようになっていく。

登場人物達の誰もが活き活きとしていて、情景が目に浮かぶようです。
主人公達は有名なお奉行様でもお忍びの将軍様でも縮緬問屋のご隠居でもなく、市井に暮らす人々だけれど、それがまたいい。

時代劇や時代小説を読んで目が肥えた人でも楽しめるだろうし、
普段そういうのはまったく読まない人も、結衣というひとりの年頃の女の子の物語として楽しめると思います。

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