WEB小説へのオマージュと皮肉に満ちた人間賛歌

 読み手・書き手問わず、Web小説界隈に関わったことのある人間ならば少なからず覚えがあるであろう、数々の「グロ描写」に思わず苦笑い。人によっては心を深くえぐられるのではないだろうか?(笑)
 おそらくは、作者氏が今までに見聞きしたWEB小説界隈の大小様々な「事件」がモデルとなっているのであろうが、それらを現実からの単純なコピー&ペーストではなく、物語の中に息づくエピソードとして見事に書き上げている。

 ――とこれだけだと「WEB小説界隈の大小の事件を皮肉った作品」と思われてしまいそうだが、本作の魅力はそれにとどまらない。

 エピソードに合わせて設計されたキャラクター達――もしくはキャラクター達に合わせて取捨選択されたエピソード――の「至らぬ人々」具合も秀逸だ。
 能力や情熱はあれど「何かが欠けた」人々が右往左往する様は、ユーモラスでもありまた悲哀に満ちてもいる。

 「至らない」からこそ人間は、時にひたむきに、時に悪どく、時にしたたかに立ち振る舞う。彼ら彼女らの織りなす群像劇からは、生々しいまでの喜怒哀楽を感じる。
 本作の根底にあるのは「人間賛歌」なのかもしれない。

その他のおすすめレビュー

澤田慎梧さんの他のおすすめレビュー734