寄り添う、という愛情表現の尊さ

ヒロインの菅原琴葉と、幽霊である日置総一郎の「恋愛ごっこ」。
一方は未練を解消するために、もう一方は生活環境の都合で、この奇妙な関係が始まります。
ラブコメから始まってホラーっぽい雰囲気を挟み、優しくも切ない感動の物語へと昇華していく構成は凄い。
すらすらと読んでいける文章も非常に上手でストレスがありません。

さて、彼氏役が幽霊ということで、当然肉体的な接触はない(ちょっとは感じ取れる)。
だからずっと一緒にいるだけ。
その寄り添うという行為が、ただそばにいて話を聞いてくれるという姿勢が、なによりも人を安心させるのだと気づかせてくれる。
どこか近くて遠い関係性が二人の心を救うことになったのなら、この出会いは必然だったのだろうなと感じます。

物語後半ではまた別の関係性へと変化しますが、そばにいて支えることの大切さというか、一緒にいようよ!という心の叫びがガツンと伝わってくる。ここは是非最後まで読み進めて感動しちゃってください。

福祉の話も非常にリアリティがあって考えさせられますし、読んで損のない物語です。お薦めですよ!

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