グラプトベリアは時間にルーズ

作者 瀧本無知

71

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★★★ Excellent!!!

「SF」と聞くと、『スターウォーズ』のような壮大な世界観をイメージする方が多いですが、そうとは限りません。

この作品で描かれるのは、会話AIを介して喋る多肉植物グラプトベリアを買った一人のOLの日常。

広告代理店の仕事・友人との女子会・植物の世話、そんな日常描写が丹念に積み重ねられ、最後にSF的なテーマがふわりと顔をのぞかせる。薬膳料理のような滋味あふれる短編です。

世界設定も綿密で、未来の広告代理店に関する描写は「短編でここまでやるか!」と思わせるほど。また、この作品はユーモアセンスが素晴らしいのですが、そのユーモアはいずれも未来社会という背景が無ければ成立しないもので、世界設定とユーモアの間にも密接なつながりを見て取れます。作り込みがすごい。

あと第五話のタイトル、センス激ヤバですね。『周辺環境は行間にビール』って。超好き。

★★★ Excellent!!!

水をやると腐るし、やらないと枯れるし、ほんと奴らはどうしてほしいの?
しゃべってくれれば楽? ほんとうに?

串カツのソース容器にまでAIが搭載された未来が、なさそうで絶妙でありそうで「ふふっ」と読んでいると、しだいに多肉植物との共生生活がうらやましくなってくる。そして結末にこめられたテーマに納得。

ビールを! 我にビールのあらんことを!

★★★ Excellent!!!

串カツを二度漬けすると唾液?を検出してAIが注意してくるような未来。
そんな時代でもくたびれたOLはサボテンに癒やしを求める。
そんな未来のサボテンはOLに話しかける。
まったく思考回路の違う二つの生命体は何を思い、何を感じるのか。
考えさせられました。

★★★ Excellent!!!

SFというジャンルだからこそ描けるテーマの一つに、「人間以外の知的種族との交流」というものがある。

古くは小説「惑星ソラリス」や映画「E.T.」といった、いわゆるファーストコンタクトものがその代表だろう。

とはいえ、この作品で主人公の瞳子が交流することになるのは、宇宙人などという大それた存在ではない。特殊なスピーカーによって言葉を話せるようになった多肉植物、マギーだ。

タイトルにもある通り、マギーは人間と比べると時間にルーズだ。特に瞳子は納期に追われるタイトな毎日を過ごしており、マギーのルーズさには何度もイライラさせられるはめになる。

しかし終盤、彼女はそんなマギーの有り様に、自分に欠けていた大切なものを見いだすことになる。マギーに注ぎ込まれる水のごとく、読み終わったあとには爽やかな読後感が残るだろう。

これが「異種族間コミュニケーション」の面白さだ。つまり、人間からかけ離れた理解不能な存在から、人間に欠かせないものを学ぶという逆説的なカタルシス。

あなたは、マギーの生き様になにを感じるだろうか。たまには時間を忘れて、こんな短編を読むのも一興ですヨ。

ここからは余談だが、マギーは渋いおじさんの声をしているらしい。なので、読むときにはぜひ好みの声優さんで脳内再生するといいだろう。玄田哲章さんのようなたくましい声でもいいし、速水奨さんのような聞き惚れてしまう美声でもいい。個人的おすすめは大塚明夫さんである(笑)

★★★ Excellent!!!

これは良いSF。
世界設定もドンピシャ好みでしたが、最後の章で、この話の伝えたかったことが解りました。
それを伝えるためには、この世界に生きるこの主人公が必要だった。新たな価値観や視点を知り、生き方を知り、彼女には何が必要だったのか、それが上手にまとめられていたと思います。
タイトル回収も秀逸すぎる…。おすすめです!!