この冴えないおっさんがモテるのはよく分かるし、何なら私も煽りたい。

かつての戦争で武功を挙げて英雄と呼ばれたものの、その経験からくるトラウマによって精神不安定となり、今や陸軍少年学校で教壇に立つ日々を送る、万年窓際大尉・野中博三。
39歳、バツイチ。
そんな彼の元に、別れた妻との間にもうけた娘が転がり込んでくるところから、物語は始まります。

やる気があるのかないのか、常にユルいペースで人と接する野中さんには、なぜか一癖も二癖もある女性たちが絡んできます。
「友達」として大人の関係を続けるエニシ。
直属の部下である伊原少尉。
カウンセラーの笠原先生。
生徒会に所属する学生、長崎。
そして娘の三和。
ハタから見たら非常に分かりやすい矢印なのに、百点満点の鈍感さでそれをスルーしちゃうのが野中さんのチャームポイント。

これは世に言う「ハーレムラブコメ」ジャンルのお話です。
その類のものでたまに見られるのが「なぜモテるのか理解できない主人公」ですが、この野中大尉に関しては全く違うと声を大にして言える。
とにかくキュートなのです。この冴えないおっさんが。
おっさん好きの私が自信を持って主張したい。この人がモテるのは自明の理である、と。

肩肘張らないユルさ。
普段はいい加減に見せていても、ここぞという時には決して崩れない信念。
踏み込み過ぎず、離れ過ぎず、人と接する時の絶妙な距離の取り方。
そうした態度の裏側にある、消すことのできない心の瑕疵。
格好付けないところが堪らなく格好いい、そんな大人の男性。
……むしろ私も煽りたい。

複雑に絡み合う人間関係、コミカルとシリアスをバランスよく行き来するストーリー展開。そして個性的な登場人物たちの魅力が素晴らしい、大人が楽しめるラブコメです。
おっさん好きの方には特におすすめしたい作品であります。

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