花々にことよせ、想いを謳う。

十二人の「僕」が、旧暦の各月に、ひとつの花にことよせて謳う、恋心。
全話まとめても一万字以下と読みやすく、一気に拝読することも可能ですが、一話一話じっくり読まれることをお勧めします。

各月の花と「僕」……ですが、花は実物とは限りません。空想のなか、地の下で芽吹きを待つ福寿草だったり、タブレットの中で妖艶に花開く月下美人だったり、着物に描かれた菊であったりします。花とともに謳われる「彼女」との関係もさまざまで、片想いだったり、結婚前だったり、別れを控えていたり……。一人称「僕」の心情と花々を含む風景を読み込んだ、詩のように感じました。
若い男性の恋心を歌った、素敵な掌編集です。

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