僕たちのスケッチ

作者 湯煙

22

8人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

睦月の福寿草からはじまって、その月に咲く花を愛でる。
その花になぞらえて、誰より愛しい人への想いを綴る。
香りがそっと漂って来る気配がする。

水無月の月下美人はまだ二人の元にあるわけではなく
それなのにジャスミンの香りを纏って、もう存在するかのようだ。
そこに無くとも想える、まるで水無月の名のように。

葉月の水面は、はしゃぐ声できらきらしている。
本当なら君だけの監視員になりたい、プールサイドの時間。
何よりまぶしい笑顔を、もっと間近で見たいと体温が上昇してしまいそう。

桔梗の花は凛として、まだ夏の名残を持つ長月にぴったりだ。
自分だけが未練があるようで、苦しくなるそんな想いは
ほんとは誰もが抱えているような気もして、瞬時にせつなくなる。

柊。そうだね、赤い実ばかり有名で、花は知らなかったよ。
氷と絡み合った花。サクッと鳴る霜柱。霜月にふさわしい表現がすきだ。
薄くて脆い氷を気持にたとえて、手に残る花を大切に愛でる人。

★★★ Excellent!!!

異性へのときめき、ふんわりとした温かな気持ち、待つじれったさと昂揚感、伝えられなかった言葉、手放した思い、さまざまな「僕」の十二の思いを載せて一年がぐるりと巡る。

花々に彩られた、繊細で多感な年頃の男の子の心情がほほえましく、ときに読み手の恋の記憶をもチクリと刺激し、懐かしさをおぼえるとともに、切なくもさせる。

私が特に気に入ったのは、以下の三話。
・弥生(三月)…ハクモクレンの描写が秀逸、花の散り方と伝えられなかった思いが上手く重なっている。
・長月(九月)…誠実でありたいがゆえに取った相手の選択に納得しつつも、心が痛む。桔梗の青の鮮やかさが心に沁み、自分の越し方をも振り返りい、胸に刺さる。特に女性読者に読んでいただきたい一篇。
・極月(十二月)…「早く来て!」ジレジレ、ドキドキしているうちに、雪ダルマになっちゃいそうだね。ふふふ。

作者さんはその身辺雑記から拝するに、私より上の年代の男性だが、これほど色彩豊かに、瑞々しいお話を執筆されている。その事実にも驚く。

と、感心し、また微笑みつつ読了したが、ただ一点惜しいと思われるのが、タイトルと惹句。いま少し工夫なされば、より多くの読者の方の眼にもとまり、お客の袖を引けることと思われる。せっかくの素敵なお話なのだから、ラッピングも…と欲張ってみられては如何。

と若干の要望も書かせていただいたが、むろん楽しませていただいたことに変わりはなく、女性にも男性にも読んで欲しい連作である。読めばあなたのお気に入りの一篇が、必ず見つかるはず。

★★★ Excellent!!!

全て違う人なのか、数人なのか、そこは読む者次第。
恋してる誰かさんの独白が季節の花と共に綴られた珠玉の十二本。
揺れ動き迷い、思い悩む男の心理を見事に描写し切ってみせたのは、人生経験の賜物か。
女性の皆様、男なんてこんなに情けない生き物なんですよ。
あ、ご存知でしたか。

★★★ Excellent!!!

「月々のスケッチ 12人の僕。それぞれの物語」を読んだ。

1話読み進むごとに、作者の優しさの世界に入り込んでしまう。
これほどに優しく切なく、愛を表現できる作者の感性の際立ちに
とても感動する。
まさに珠玉の短編集!

純粋な淡い恋心の話に、一陣の春の風に吹かれた様に
温かな気持ちをよびおこしてくれた。

中でも「九月 語りかける長月」が好きだ。
短い物語の中に、見事に主人公の感情が織り込まれていて、
読み終わった後には、しばらく体が動かなかった。
あまりに切なく悲しく美しくて・・・。
ただ涙が溢れるのではなく、体の奥深くの涙の壺の蓋が開いて、
そこからじわじわと体中に染み込んでくる感じたった。

文章は一つとして余分なものがない。
優しい語り口で、人間心理の奥深くにあっという間に
誘われてしまう。

どんなジャンルの方にも是非お読み頂きたい、珠玉の作品です!

★★★ Excellent!!!

十二の花と景色を切り取った、十二ヶ月のショートストーリィ。

筆者さんの人柄が色濃く映った
やさしい「僕」の十二ヶ月。

ショート好きなひとには、引っかかる作品じゃないかな。
オチを見せてない分、逆に地の文のセンスが光って見える。
中でも、葉月と長月が秀逸♪

ショート愛好家の自分としては、文句なく星みっつ♪
Fabulous!!