第19話 常識大事
戻った先はあの港町近くだったりする。
「まずは
お粗末な魔法式ではあったものの、異世界人には通用するレベルでかけられていた。おそらくは、徐々に強める予定だったはずである。
その残滓が二人にはありありと残っていた。
軽くではあるものの、魔法を解く。そして相手方に伝わるのを確認しつつ稔憲は口にした。
「再度自己紹介」
「テディだ」
「トニーです。これから一緒に旅することになるからよろしく。料理は基本俺が狩ってきてするから」
「……あ、ありがとうございます」
「テディには休む際の結界とかをはってもらうから。ゆっくり休むこと。……野宿がメインになるけど、大丈夫?」
この気遣いは隆文ならではといえる。
妙齢の女性、しかも日本人が野宿など未体験である、というのをすっかり忘れていた稔憲だった。
「宿屋に泊まるには金がない。宿屋に泊まる金を一度で稼ぐとしたら、それこそ魔獣を狩って解体して卸業者に持っていかないと換金できるものは何もない」
「……そ、そんな」
稔憲が口にすれば、二人とも狼狽えていた。
「大丈夫、金は俺がしばらく稼ぐから。君たちはまず薬草の採取でお小遣いを稼ぐところから始めて。
薬草のことならテディが詳しいし。魔獣とかを狩るのは、刃物の扱いに慣れてからだね。その装備で魔獣に突っ込んでいったら間違いなく一瞬で死ぬよ」
「でも、この装備は……」
神々の祝福を受けているということらしい。馬鹿らしいと、稔憲は思う。
「神々の恩恵の範疇に入ってないよ、魔獣は」
だからそんな祝福に意味はない、そんなことを隆文が説明していた。
あながち間違いではない。ただ、その装備に祝福が一切ないだけで。
冥界神を倒そうとする輩に神々が恩恵を与えると思っているのか、そう問いただしたくなる。
元が「魔王を倒す」という名目なのだから、あってしかるべきという女性二人の考えが分からない。
隆文には「そういうもん」と言われたので黙ってはいるが。
少しずつこちらの「常識」を教えるという観点から、ゆるりと拠点へ戻ることにした。
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