第18話 逃げることにしました
「我が国に滞在していただいている勇者のお二人です」
宰相だという男が、わざと遜ったように言う。言葉の端々に嘲りが見えるが。
「
「
鎧とは言えない、お粗末な胸当てだけをつけた二人が紹介された。
「トニーと申します。とある神殿で末端の助祭を務めておりました」
「テディです。俺も神殿の警護をやってました」
ここで嘘は言っていない。
テディこと隆文はよく稔憲の護衛をやる。そしてトニーこと稔憲は、前世で取った杵柄……というか神々のごり押しで司教もどきをさせられる。その場合は、どこの神殿長よりも立場が偉くなる。地球風に説明するならば「カトリック教会でローマ教皇よりも位が上。しかも神のごり押し」ということになるのだ。
なので、稔憲がやる祈りのポーズはとても様になる。中身を知らなければ、だが。
「では、勇者様方の勝利をお祈りいたしましょうか」
「え?」
「小さな集落へ私も行きまして祈りを捧げたことがございますので」
にこりと稔憲が微笑んで言う。
隆文だけが、この微笑みが恐ろしいということを知っている。
そして、「祈りを捧げる」という名目の元、稔憲は移転魔法を発動させた。
「というわけで、無理やり召喚したお二人は連れて行く」
ここにこれ以上この二人を置いておくわけにはいかない。そう、判断したのだった。
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