第7話 ここの神々は……
それが……と口を開いたのは時の女神だった。召喚は本来一人だけのはずが、どうやら巻き込まれた人物がいたようだと。
隆文に言わせると「そういう設定もあるよね」で終わってしまう。片方が妙な正義感があったり、他者をいたぶったりということが起こるらしい。ちなみに地母神が祝福を与えたのは、呼び出された方だった。
「というか、加護をホイホイ与えてよかったんですか?」
加護を与えた人物の人となりを知っていて与えたのかと、隆文は問いただした。
「……そこまで考えておりませんでしたわ」
地母神の言葉に、稔憲はでかいため息をついた。
「だ……だってそこまで大ごとだとは思いもせず。苦労しないようにと……」
「……まぁそうかもしんないけどさ、よく考えてみよっか。地母神様としては如何なもんなんですかね。他神の加護のついたものがこの神殿に乗り込んでくるって。んでもって、乗り込んできた相手は、自分を倒すために来たとなったら、戦争になりませんかね」
「……あ」
ここの神々はそこまで考えもしなかったようで、全員絶句していた。
「隆文、もういい」
「いいの?」
「私は冥界神に恩義があるから、邪魔はさせてもらう。それからこの顛末を最高神から伝えて……」
「そちらはしてある。冥界神殿が呆れていたのはそのためか」
神々の中で最長齢なのが冥界神だ。冥界神のみ三代目で、最高神が五代目。他は四代目なのだ。
もしかすると何か知っているのかもしれない。その辺りも聞いてみようと心に決めた稔憲だった。
「つか、どこでも冥界神も崇められていると思ってたんだけど」
ヘブンズで稔憲たちが根城にしている家で、隆文は呟いた。冥界神は闇と時空を操る。高貴なお家程インベントリや空間収納の恩恵を受けている。その冥界神を倒すというのは、一時的にそういった魔法も使えなくなるということだ。
一時的、というが時間がどれくらいなのか分からない。様々な文献を漁った稔憲と蒼の見解は「不明」の一言に尽きる。
「百年単位でもおかしくはない。……いい教訓になりそうだな」
「お前ね……」
地球でインベントリが使えるのも、地球とヘブンズを行き来できるのも、冥界神の加護があるからだというのを忘れていないか、そう隆文の顔が訴えていた。
「勿論、冥界神に何かあるというのはまずい。どうせなら、その国に必要最低限の冥界神の加護もなくなってしまうのがいいと思っただけだ」
「……予想以上にえげつなかったよ」
加護がなくなる、つまり夜が来ないだけではなく安息も取れなくなる。その国どころかその地は「休まずの地」として、息をしなくなる。有体に言えば「過労死」が地単位でおこなわれるということである。
「国の指導者が悪い。それ以外何も言いようがないだろうが」
身も蓋もない。というか、神々にそんなことをしておいてただで済むと思うな、それが稔憲の言い分だった。
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