第14話 急ぐ旅路?
移転先は新しくできた島の近く。近いと言っても、船で一週間はかかると船乗りに言われたばかりである。
「その前にあそこに行こうとするやつらがいねぇけどよ」
「んだんだ。あいつら、自分たちの用件しか言わねぇし、金払いも悪いからなぁ」
「船を貸してくれれば金貨十枚。操縦をしてくれるならもう五枚追加しよう」
金貨一枚が日本円にして約一万円。貸し切りにするなら、妥当ともいえる金額だ。
「飯はどうするんでい」
「私が用意している。船乗りたちの分もだ」
正確には隆文が作ったのを稔憲の無限収納にいれているのだが。
「出航は?」
「出来るだけ早く」
あとで記憶改ざんすれば問題ない。出来る限り早くつくことが重要なのだ。
急ぐ稔憲たちが、船乗りには犯罪者に見えたらしい。ちょうどいい機会と言わんばかりに、その金額にまたしても上乗せをして、わざと犯罪者に見えるように仕向けた。
……間違いなく、乗船後捕らえれそうだ。悟った隆文はでかいため息をついた。
外聞を少しは気にしなさい、そう言いたくなるのをぐっとこらえた。
そんな報告を使い魔から貰ったフラウとガザエルは、頭を抱えた。
稔憲は生まれ変わっても変わらないらしい。
「捕らえられたら、助け出すどころじゃないと思うんだけどねぇ。フラウはどう思う?」
「同意いたします。御師様からも報告が来て、『犯罪者と間違われたのなら好都合。その方が相手に利用しがいがあると思ってもらえる』と書かれておりましたので」
相変わらずぶっ飛んでいるお人である。
「御師様じゃないと手綱にならないってほんとだねぇ」
「まったくです。兄弟子たちの素晴らしさはいつになっても思い知らされます」
こんなことをしでかす稔憲が賢者になれたのは、間違いなく直弟子、しかも一番弟子とか古参の弟子の尽力である。
「私たちもまだまだだねぇ」
「さて、無事出航も出来たようですし、御師様たちは如何なさるのでしょうかね」
乗船後捕らえられそうになり、相手が怪我しない程度に魔法を放ったという報告に、二人は再度頭を抱えることになる。
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