第24話  足りない言葉を補うのもお仕事です

 食事の用意は、火起こしを稔憲が、食事作りを隆文がすることになった。

「テディさんは魔法使えないんですか?」

 確か、こちらの女性は麻沙美だったか。

「使えない。加護が無いから。くれるって言っても要らないけど」

「え!?」

「俺には必要ないかな。今言えるのはそれだけ。あ、もし魔法とか使いたいんだったら、トニーに聞くこと」

「……トニーさんに、ですか?」

 露骨に嫌な顔をしなくてもいいと思うのだが。

「でも、トニーさんは……」

 魔法は一切使わないほうがいい、それしか言わなかったという。

「あいつは言葉が足りないからなぁ」

 それを直せと隆文も言っているし蒼も忠告している。無論、稔憲の両親もだ。

「……あのね、俺が『ラノベあるある』と言った言葉にあなたたちは反応したよね?」

 その言葉に麻沙美がこくりと頷いた。

「そこから思い当たることって、何だと思う?」

「え?」

「『ラノベ』ってどこの言葉?」

「あたしたちが、いた、世界です」

「うん。じゃあ、どうして俺たちがそれを知っているとおもう?」

 これだけヒントを与えていたら、稔憲には「甘い!」と言われそうだが。

「俺は、『ラノベ』という言葉も、その言葉が『あなたたちのいる世界の言葉だ』というのも知っている。つまりは、どういうことだと思う?」

 混乱している彼女に、考えろというのは酷だが、常に答えを教えてもらえると思わないほうがいい。だから、敢えて「ヒント」という形だけを取っていく。

「……あなたが、あちらの、世界を知っている」

「それもあるね。他には?」

「あの門を使って、地球に行った」

「……それはないかな」

 何せ失敗品だ。

「『あちらの世界を知っている』それだけ分かれば十分だ」


 もう一人の女性、絵里奈を連れて、稔憲が近くに来ていた。

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異世界賢者は世界を弄ぶ 神無 乃愛 @Noa-Kannna

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